研究概要 |
当該研究は脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血(SAH)後の脳血管攣縮に対し、アラキドン酸(A.A.)リポキシゲナ-ゼ系代謝産物ロイコトリエン(LT)の関与、更にA.A.代謝或いは脂質代謝の関与を検討し、従来から指摘されている脳血管攣縮惹起物質との相互関係の中での位置づけ・役割を検討するものである。そこで初年度は、実験的SAH犬の髄腔内へのLTC_4,D_4の注入にてくも膜下腔に面した頭蓋内主要動脈の拡張、収縮、弛緩のという3相性変化を認めた。二年度は、このLTの血管平滑筋に対する作用に着目し、培養血管平滑筋を用いて細胞内Ca^2濃度の変化を検討した。その結果、オキシヘモグロビン≧エンドセリン>セロトニン>ノルアドレナリン>プロスタグランジンF_<2α>>LTC_4,D_4の順で細胞内Ca^2濃度の上昇作用を認めた。これは従来からLTC_4,D_4がslow reactive substance for Aと言われ、同じ平滑筋収縮物質ではあるものの刺激と同時に出現する急速な細胞内Ca^<2+>の上昇、そして収縮を起こすオキシヘモグロビン等とかなり異なる収縮メカニズムが考えられ、興味あるところと思われた。そこで三年度は、SAH後の髄液中に先の細胞内Ca^<2+>の上昇を引き起こす物質が存在するか否かを検討し、Ca^<2+>のreーelevationという現象をとらえた。今後この現象を引き起こす物質について、又、LTの関与について更に検討すべきと思われた。一方、A.A.代謝・脂質代謝の一つとして、初年度はヒトSAH時の髄液中の脂質代謝及びその経時的変化を検討し、リゾリン脂質の上昇を認めた。二年度には髄液中のイノシト-ルリン脂質特異的ホスホリパ-ゼC(PLC)活性の上昇も確認した。そこで三年度にはこれが細胞膜上でジグリセリドの放出を促し、細胞内ホスホキナ-ゼC活性を上昇させ稼血管攣縮のtriggerに一役を担っている可能性を示唆した。今後、このSAH時の血管平滑筋細胞での刺激・応答についても更に詳細な検討が必要と思われる。
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