研究概要 |
6匹の猿眼を使用して片眼に実験的高眼圧症をキモトリプシン後房内注入、及び線維柱帯光凝固で作製し、他眼にコントロ-ルとして視神経乳頭篩板前後の神経膠細胞の変化を経時的に神経膠細胞のマ-カ-であるGlial Fibrillary Acidic Protein(GFAP)による免疫組織化学染色と細胞増殖の有無をブロモデオキシウリジン(Brdu)法で光学顕微鏡により観察し、視神経乳頭の緑内障性陥凹状態と神経膠細胞の変化を比較検討した。 眼圧は経時的に空気眼圧計(PTG,Alcon社製,Fortworth,Texas,USA)で測定し常に実験眼が5〜25mmHg高眼圧状態にあることを確認した。又、眼底検査により視神経乳頭に緑内障性陥凹が惹起されていることを確認した。様々な病期の猿を屠殺前30分にブロモモデキシウリジン(Brdu)30mg/Kgを静注し、眼球を摘出し、ザンボニ液で固定後、型通りパラフィン切片作製し、脱パラ後3%過酸化水素水で内因性ペルオキシダ-ゼを阻止し、一次抗体(Antiーhuman GFAP mouse monoclonal antibody:1/100 SAB10)で1時間反応させ、更にPBSで洗浄後ペルオキセダ-ゼ標識二次抗体を(Antiーmouse IgG:1/100:BIOSYS COMPIEGNE)を1時間反応させた後、PBSで水洗しDABーH_2O_2溶液に浸し発色させた。 コントロ-ル眼においてGFAP陽性部は視神経乳頭生理的陥凹部分で2ー3層にわたり観察され、主としてGFAP陽性細胞(神経膠細胞)は視神経線維束周囲、網膜中心動静脈周辺に観察されネットワ-ク状に互いに連なっていた。乳頭緑内障性陥凹が進行するに従いGFAP陽性細胞(神経膠細胞)の肥厚があり、視神経線維を包む神経膠細胞の走行、構造の乱れがみられ、BrdU陽性所見を示す神経膠細胞の増加がコントロ-ルに較べ明らかで、神経膠細胞の増殖が起こっていることが推定された。 これらの結果は高眼圧により緑内障性乳頭陥凹が形成される際、神経膠細胞は神経線維が傷害され消滅していく過程でそれを補整、修復していくものと考えられる。 今後、緑内障性乳頭陥凹の成因を究明する為にまず、(1)正常眼における細胞外マトリックスの分布、局在、(2)加令に伴う変化、(3)緑内障病期による局在、分布の変化等も検討されねばならない。
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