本研究実施に際して、当初は免疫組織化学的手法を光顕及び電顕観察に用いて、高眼圧におけるグリア細胞を中心とした視神経乳頭部の組織学的変化を捉えるものであったが、各種組織の微細構造の変化を捉えるには従来の光顕及び電顕所見だけでは十分でないことが分かり、代って組織をより自然な状態で、三次元でより高い解析が可能な急速凍結、ディープエッチング法を用いて検討した。実験動物として当初はサルを用いたが、一連の実験を行うに経費が掛かりすぎるため、モルモットに変更した。モルモットの視神経乳頭部は、篩板後部まで有髄神経で篩板部から無髄神経になり眼球内へ移行していき、ヒトの視神経乳頭部と同じ組織形態を有しているため緑内障における視神経乳頭部の変化を捉えるには有用なモデルと思われた。 今回の研究では急速凍結、ディープエッチング法という新しい手法により正常眼での視神経乳頭部の微細構造を捉えることが出来た。特に篩板を通過する視神経軸索の内部構造の観察には本法は大変優れ、神経軸索内の微小管、神経フィラメントなどの骨格蛋白が明瞭に描出されたばかりか、これらをつなぐクロスリンカーも同定することが出来た。更にグリア細胞内構造、篩板細胞外マトリックスの微細構造、及びこれらの微細構造と視神経軸索の形態学的関係も明かにすることが出来、手法の有用性が証明された。
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