研究概要 |
我々は歯周病発症の機構を解明する目的で歯周組織破壊におけるアラキドン酸代謝系の役割に関する研究の一部として、歯肉において活性の特に高い12ーリポキシゲナ-ゼ代謝産物である12ーHETEの白血球に対する作用とその機序について検討した。 1.12ーHETEはヒト白血球においてfMLPに比べて約1000分の1の白血球遊走活性を有している。また、12ーHETEは、ヒト白血球においてfMLPより微小の脱分極を引き起こした。さらに、12ーHETEは細胞外Ca^<2+>の存在、非存在に関わらずヒト白血球[Ca^<2+>]iを上昇させた。 2.12ーHETEとfMLPの間に白血球遊走作用および[Ca^<2+>]i上昇において相互作用が認められた。しかし、fMLPの受容体拮抗薬であるNーBOCーMLPは12ーHETEによるヒト白血球[Ca^<2+>]i上昇に全く影響しなかったことから、この相互作用は受容体レベル以降の段階で作用していることが示唆された。 3.12ーHETEによるヒト白血球[Ca^<2+>]i上昇は細胞外Ca^<2+>の存在、非存在に関わらずislet activating protein(IAP)の前処置により完全に抑制された。また、ヒト白血球[Ca^<2+>]i上昇は細胞外Ca^<2+>の存在、非存在に関わらず、最近開発された特異的phospholipase C(PLC)阻害剤であるUー73122の前処置で、完全に抑制された。4.12ーHETEはヒト白血球において、刺激直後よりinositol 1,4,5ーtrisーphosphate(IP_3)の産生を認めた。 以上より、12ーHETEはヒト白血球において、IAP感受性の蛋白を介するPLCの活性化による、IP_3の産生による細胞内Ca^<2+>の放出に続く細胞外Ca^<2+>の流入により[Ca^<2+>]i上昇を引き起こし、様々な細胞機能を発現している可能性が示唆された。
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