マウス倍養細胞FM3A細胞をもちいてH1ヒストン燐酸化酵素を、分裂期におけるH1ヒストン燐酸化部位を含む合成ペプチド(S1ペプチド)を基質に、核画分から硫安沈澱、MonoQ、ヒドロキシアパタイト、ス-パ-ロ-ス12、MonoSによって精製した。その結果、この酵素は酵母のCD2^+キナ-ゼの哺乳類型cdc2キナ-ゼと同一であることが免疫化学的手法により明らかになった。さらにこの酵素はH1ヒストンに対し非常に選択性が高く、各種ペプチド基質を用いた結果から、トレオニン(セリン)ープロリンー(アミノ酸)ーリジンの配列を認識することがわかった。H1ヒストン燐酸化酵素/cdc2キナ-ゼは細胞周期においてG2/M期で活性が上昇しこの活性の上昇は酵素の燐酸化チロシン残基の脱燐酸化を伴っているものと考えられた。しかもこのcdc2キナ-ゼのG2期での活性化、M期での不活性化いずれもフォスファタ-ゼ1、2Aの阻害剤オカダ酸によっておこることがわかり、活性化、不活性化いずれの制御機構においても蛋白質の燐酸化反応が関与しているものと考えられた。この機構の詳細については今後の研究が必要である。さらにG2/M期に高温で増殖が停止するマウス温度感受性変異株tsFT210細胞がcdc2キナ-ゼ遺伝子に点突然変異がおこりそれによりC末端部のプロリンがセリンに変化していることをが確認した。そのことから哺乳類細胞においてcdc2キナ-ゼがG2/M期に必須な酵素であることを明らかにした。
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