人間の痛みは、世界の人々に共通した現象で、有史以来の大きな課題でもある。疼痛発現機序や痛みの客観的評価法については、既に多くの報告があるが、未だ十分な解明には至っていない。 この状況下で、看護者は患者から痛みの訴えがあった場合、当該患者の痛み表現中から、痛みの性質や強さを査定し、痛みケア-を実施する。この過程にあっては、患者-看護者の間でその痛みをズレることなく的確に理解し合ってこそ、有効な痛みの看護がなされるといえよう。 この一資料として、痛みを表す言葉、そしてこれら各語の意味する痛みの性質や程度、また、痛み強度を表すツ-ルはどんなものがよいか等に焦点をあてて、これからの痛み看護について研究している。 平成元年度は下記に示すような研究をした。 1.痛みのある患者98名を対象に、VISUAL ANALOGUE SCALE(以下VASと省略)を使用して、痛みの強さ、3段階法(軽度 中等度 高度)による痛みの強さの区分、その時の痛みを表現するのに最も適切と思われる言葉などについて面接調査を行なった。 その結果、痛みの強さにおけるVASのスコア-と3段階法との関係では、0-5が軽度(1)、2-8が中等度(2)、5-10が高度(3)と大別できた。これら痛みに対する処置やケア-は、(1)では、大位変換、良肢位の保持、安楽な体位、氷枕氷嚢の貼用、含嗽、安静臥床など、(2)はマッサ-ジやタッチング、罨法を加えた看護ケア-、(3)は神経ブロックを含む薬物療法等が多くなされていた。 そして、これら痛みを表現する言葉として49語が収集されたが、それらの言葉は痛みの種類や性質が推測できるものが多かった。
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