痛みは生命維持の上で重要な警告信号であるが、それを感じるものにとっては不快で可能な限り回避したい感覚体験でもある。この痛みを表現するものに痛み表現用語があるが、これには痛みの性質や強さが表わされている。 そこで、痛み評価の客観的資料を見つけるため、ほぼ標準語を使用している地域の大学生・成人・老人を対象に、0=痛みを感じないから10=耐えられない痛みまでの11段階法を使用し、過去の痛み体験を基に痛みの強度を測定した。 その結果、大学生群の痛みの強度は高く、高齢者群は反対に低い。また、痛みの強度を高く、低く表現する言葉の配列はどの集団でもほぼ一致した。同様の調査を医療職である看護職と医師群にも行い比較したところ、看護職群はどの群よりも強度が高く、医師群はどの群よりも低い傾向にあった。このことは、対象者の痛みを理解するのに、共感的、肯定的資質が看護職にはあると一つには推測できよう。また、これら各語毎に、集団別にt検定を試みると数語に有意差を認めた。 そして有意差のない痛み表現用語に関しては痛み強度図を作成した。このような結果が、ペインコントロ-ルが積極的になされるようになった今日であっても、痛みがコントロ-ルされるまでには相当の看護観察期間を必要とするので、痛みが、諸々の言葉で表現され、その中には痛みの性質や部位や強度や持続時間などが包含されていることを十分認識して、患者の痛みの訴えに耳を傾けたならば、患者・看護者間で、痛みについての理解はよりしやすくなるものと考える。
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