人間の痛みは世界の人々に共通した現象で有史以来の大きな課題でもある。疼痛発現機序や、痛みの客観的評価法については、既に多くの研究報告があるが未だ十分な解明には至ってはいない。この状況下で看護者は、患者から痛みの訴えがあった場合、当該患者の痛み表現中から痛みの性質や強さを査定し、痛みの看護を実践する。この過程にあっては、患者ー看護者間でこの痛みをズレることなく的確に理解し合ってこそ、有効な痛み看護がなされるといえよう。 そこで痛みアセスメントの基礎的資料を作成するため、指定する痛み表現語彙33語について、それら個々の意味する痛み表現語がもつ痛みの強度値について、大学生・成人・高齢者の集団を対象に調査し次のような結論を得た。 1.当研究で得られた痛み表現語がもつ痛みの強度値は、大学生>成人>高齢者の順となり加齢に伴い下降する傾向にあり、つまり疼痛閾値は上昇の傾向にあった。 2.大学生・成人・高齢者の集団間で差のない痛み表現語16語がもつ痛みの属性と強度値を図式化することができた。 3.比較的強い痛みを表す痛み表現語と弱い痛みを表す痛み表現語の配列順位は、大学生・成人・高齢者ともに一致しており、痛みは主観的体験であるが、その言語表現と強度感覚の間にはかなり普遍的な結びつきがある。 4.痛み表現語においては性差は認められない。また、患者の訴える痛みを看護者が確実に把握する1方法としては、3事例の痛み看護実践を通し次のような結論を得ることができた。 1.体験している痛みを言葉でもってありのままに表現する。 2.痛みの強度に関しては数値で測れるスケ-ルを使用する。
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