研究概要 |
申請者らは、軟骨基質中に未知の成長因子(軟骨由来因子、CDF)が存在することを明らかにしてきた。本研究において、我々は、ウシ胎仔軟骨1Mグアニジン塩酸抽出物を出発材料として、アセトン分画・限外瀘過・分子篩クロマトグラフィ-・ヘパリンアフィニティ-クロマトグラフィ-・逆相クロマトグラフィ-の手法を駆使して、分子量約25kDaの生物活性因子(chondromodulinーI,ChMーI)の完全精製に成功した。精製ChMーIは、CDFに期待されるすベての生物活性を保持していた。つぎに、気相シ-クエンサ-により、ChMーIのNー末端27残基のアミノ酸配列を明らかにし、ChMーIのリジルエンドペプチダ-ゼ消化断片から、さらに21酸基のアミノ酸配列を明らかにした。これらのアミノ酸配列をもとに、ウシ胎仔軟骨cDNAからPCR法によりChMーIのNー末端部分に相当するcDNA断片(293bp)をクロ-ニングした。これをプロ-ブにしてノ-ザンブロットを行ない、ウシ骨端軟骨RNA中にChMーImRNA(約1.7kb)を同定した。興味深いことに、ChMーImRNAの発現は軟骨組織に特異的で、他の組織では全く発現されていなかった。次に、λgt10に組み込んだウシ胎仔骨端軟骨cDNAライブラリ-をスクリ-ニングして、完全長ChMーIcDNAをクロ-ニングして塩基配列を決定した。その結果、ChMーIは、121残基のアミノ酸よりなる糖蛋白質で2個のOー結合糖鎖と1個のNー結合糖鎖を有する。また、ChMーIは、335残基のアミノ酸より成る前駆蛋白質のCー末端部分として生合成され、ChMーI部分に先立つプロセシングシグナル(ArgーGluーArgーArg)部分で切断されて細胞外に分泌されるものと考えられる。
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