研究概要 |
分子線やイオンビ-ムなどの散乱実験で使用する高精度マニピュレ-タを,超高真空用に開発されたステッピングモ-タ,スライドベアリング,ボ-ルねじなどを利用して製作した。機械部分の製作は東北大学科学計測研究所の付属工場で行い,配線,動作テスト,真空テストは我々の研究室で実行した。昨年度に,6軸(X,Y,Z,θ,φ,傾き)が微調可能な精密ステ-ジと,それを収めるアルミ合金製超高真空容器をそれぞれ完成していたので,本年度は精密ステ-ジを真空容器に収め,配線をして真空中での動作テストを行うことが主な仕事であった。パ-ソナルコンピュ-タでステッピングモ-タをコントロ-ルするために,インタ-フェ-スを作り,ソフトプログラムの開発を行った。動作テストは4軸(X,Y,Z,θ)に関しては,順調に進んで問題もなかったが,φおよび傾き動作については機構が複雑であり,最終チェックをするに到っていない。真空テストは,タ-ボ分子ポンプ,インオポンプ,ロ-タリ-ポンプからなる排気系を使って行なわれ,残留ガス分析には四重極質量分析計を使用した。到達真空度はベ-キングによってマイナス10乘ト-ルをめざしたが,現在はマイナス9乘ト-ルで足踏みしている。これは真空装置に若干のリ-クがあるためである。残留ガス成分には,水素,水,一酸化炭素,二酸化炭素の他に,種々の炭化水素および塩酸がみられた。これらの不純物ガスのソ-スが,配線に使用したテフロン線によるのか,スライドベアリングなどかは末だ不明である。ステ-ジを動かすと,残留ガスの水素が増えた。これはベアリングから放出されたものである。 装置は外見上完成しているが,当初に目的とした動作についてはまだ一部確認されておらず,到達真空度もやや悪いので,今後に時間をかけて改善してゆく予定である。
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