1.試作装置の性能評価:平成元年度に試作した光ファイバ-を利用した遠隔操作型のレ-ザ-ラマン分光装置の性能評価ならびにその改善を検討した。光ファイバ-を介す測定での検出感度を検討するために、ステンレス鋼の上にKBrを用いて模擬さびを固定し、通常の測定との比較を行なった。レ-ザ-光の光ファイバ-内での減衰、ラマン光のファイバ-内での減衰などの評価の結果、通常の測定より約1/4〜1/8程度検出効率が落ちていることがわかった。この程度の検出感度の減少は多チャンネル光量検出器の導入でカバ-することができた。 2.多面積の普通鋼のさび層の検出:0.1×0.1m^2の普通鋼を塩水にデップし、乾湿を繰返して生成したさび層を光ファイバ-を介した遠隔測定型ラマン分光法で測定した。普通鋼の上にはβーFeOOHのスペクトルが見出された。 3.各種形状の鋼のさび層の検出:(1)ガスボンベの蓋のさび:塩素ガスがある環境下に長年放置されていた窒素ガスボンベの蓋の部分を測定した。形状は円筒であり、その直径は8cm、高さ18cmである。高さに応じてさび組成が異なり、上部には無定形なもの、下部にはβーFeOOHならびにFe_3O_4からなるさびを検出した。(2)ガススト-ブの蓋の裏のさび:ガスの炎に長年曝されており、高温環境下にある蓋の裏側部分(直径約30cm)からαーFe_2O_3ならびにFe_3O_4からなるさびを検出した。(3)登山用ピッケルのさび:名古屋市の郊外の住宅地のベランダに約1年半放置されていた登山用ビッケル上のさび層を測定し、ブロ-ドなラマンピ-クではあるが、γーFeOOHと同定できるさびを検出した。
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