研究概要 |
昨年度は1.微量の植物組織からの簡便なDNAの抽出法の確立、2.リボソ-ムRNAをcodeする部分だけを含むプラスミド、遺伝子間の部分だけを含むプラスミドなどの作製、3.上記プラスミドのディゴキシゲニンによる非放射能ラベルおよびエライザによる発色、4.簡易なSouthern hybridization法の使用による容易な雑種識別法が確立した。これを用い木本性再分化植物も解析した。ポプラとケナフの融合処理による再分化植物から、両親と形態的に異なった植物が得られたが、本法による分析の結果、ポプラであることが証明された。これは本法が、木本性植物にも利用できることを示している。 本方法は微量な組織からDNAを抽出し、それを解析するシステムであるから、雑種の識別のみではなく、細胞融合による雑種カルスの生育過程による葉緑体やミトコンドリアゲノムの動向を調べるのにも非常に有効である。このためタバコ属植物の細胞融合による雑種カルスの細胞質ゲノムを分析し次の結果を得た。1.雑種カルスで調べると葉緑体とミトコンドリアゲノムがそれぞれ異なっているcybridが比較的多くみられた。2.ミトコンドリアの遺伝子であるatpA,cob,coxIIなどをプロ-ブにして調べたところ2種のミトコンドリアDNAが組替えを起こした結果であるhybridミトコンドリアDNAがカルスで検出できた。3.N.langsdorffiiのミトコンドリアDNAではatpA遺伝子内で組替えが起きており、4種類のatpA遺伝子が存在する。これとN.glaucaとの雑種カルスでは両種のミトコンドリアDNAがやはりatpA遺伝子内で組替えを起こしていた。これは正常植物での組替え場所が細胞融合時でも組替え場所になることを示しており、ミトコンドリアDNAの組替えに関しての新しい知見である。
|