研究概要 |
昨年度の研究の継続である。昨年は5症例について検討を試みた。本年度はさらに調査例を増加し、合計10症例の骨髄移植患者および骨髄提供者である患者同胞について詳細な標識遺伝子の挙動を観察した。 その結果は、昨年度の調査成績を否定するような成績は得られず、現存続行している研究の正当性、合理性を立証するものであり、実験の集積のあることを確認した。 すなわち、赤血球型系ではABO,MNSs^^ー,P,Rh,Lewis,Kidd,Duffy,KellーCellano,Diego,Lutheran,Xgなどのシステムにおいて、患者と提供者の表現型の異なる場合には、異なる表現型はすべて提供型に転換する。血液標識遺伝子の転換は、末梢血レベルでは、移植後30日頃には検出できる。 これを骨髄レベルで観察すると、移植21日目の骨髄より単核球を分離し、in vitroコロニ-形成法により,得られた赤芽球コロニ-構成細胞の血液物質を調べたところ、14日間の培養細胞(赤芽球)の約90%が提供者型に変化することも判明した。なお、このような、提供者への転換は移植骨髄の生着状態とも関連し、臨床症状は血液型の変化に伴ない改善方向に向っていた。 他に注目すべき標識遺伝子にHpの挙動がある。Hpの挙動がある。Hpは外科手術、輸血および感染症などによって異常な挙動を示す標識遺伝子とされているが、骨髄移植においても例外ではなく、骨髄移植10日目頃の患者末梢血からはHpシステムの検出は困難である。しかるに、移植骨髄の生着を臨床的に認める頃になると、末梢血中にHp表現型は検出されるようになる。従ってHpの挙動もまた骨髄移植の生着効果判定の標識となる可能性もある。いずれにしても、人間の標識遺伝子の骨髄移植による挙動の調査は、移植生着率の判定には欠かせないものと推定される。
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