研究概要 |
平成2年度にウッドチャック肝炎ウィルスを接種したノンキャリヤ-幼獣でPCR法,もしくはRIAによる表面抗原測定で陽性と判断されたものは合計9匹に達した。本来ウッドチャックのキャリヤ-は100%肝細胞癌を発生するのでこの9匹をエコ-グラムで追跡中である。しかし今のところ肝癌を発生した個体はない。キャリヤ-は通常3年令で肝癌を発生するので未だその年令に達していないので結論を下すことはできない。継続して経過を追う予定である。 今年度長野飼育場で得られた幼獣は3匹のみで極端に出生率が低下した。親の老令化のためと考えられる。この3匹に関しては2ヶ月後ウィルス接種を行ったがRIA法,PCR法でもキャリ-化しなかった。方法論に関してPCRで陽性と判定したもののうちRIA法で陰性となったものがあるがこれはPCRの原理より理解し得るがRIA法で陽性となった個体でPCR法で陰性となったものが存在した。測定をくり返しても同じ結果なので測定誤差ではない。プライマ-作成に際して増幅領域として表面抗原をコ-ドする遺伝子をはさむ部分を選択したが,このプライマ-とはやや異るプライマ-を作成する必要があると判断し検討中である。 なお野生キャリヤ-から発生した肝細胞癌につき癌遺伝子を検討中であるが,C-mycのrearrangementについては今のところ認められていない。しかしn-mycに関しては4匹,15結節の腫瘍にrearrangementが見出された。このrearrangementの有無はウィルスDNAの組み込みpatternと一致していることが多く癌結節の間のclonarityの同一性を示す指標となると考えられる。
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