研究概要 |
1,当研究室のこれまでの研究によって、mgcl-1(mouse germ cell-less-1)遺伝子産物は始原生殖細胞や精子形成に大きな役割を果たしていること、また核膜に局在しており核構造の維持に関与していることが判明している。mGCL-1の機能を解析するためにyeast two hybridスクリーニングを行った結果、tumor susceptibility gene 101 (TSG101)がmGCL-1と結合することが見いだされた。次にTSG101はユビキチン化阻害によってMDM2の量を増大させるので、mGCL-1がMDM2-p53経路に及ぼす影響を調べた。その結果mGCL-1はMDM2の細胞内局在を核から細胞質へと大きく変化させることにより、MDM2の分解を促進することが判明した。さらにこの時p53の蛋白質量、転写活性化能とも増大していることも明らかとなり、mGCL-1が核膜においてMDM2の核外移行を行うことによってMDM2-p53経路を制御していることが明らかとなった。 2,SAGE法によって胚性幹細胞と始原生殖細胞で発現が異なる遺伝子を調べ、始原生殖細胞でのみ高い発現が見られる遺伝子、PGC7をクローニングした(Sato M. et al.)。PGC7の機能解析を行うためにtandem affinity purification (TAP)法を用いてPGC7と結合する分子のスクリーニングを行った。その結果、核移行に関与する分子Ran binding protein 5 (RAN-BP5)がPGC7と非常に強く結合することが判明した。この結果は培養細胞を用いたin vivo binding法でも確認された。現在PGC7の核内への移行、および局在変化がどのような作用を引き起こすか、についてさらに解析を進めている。
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