岩石学的実験の結果、北中国のサンプルが保有する磁性鉱物は、主にマグネタイトであった。北中国の中生代の岩石に多く見られる磁性鉱物であるヘマタイトは検出されることは少なかった。ジュラ紀の試料においてはまれにゲータイトが検出された。これは現世における風化の影響によって現れたものと考えられる。 超伝導磁力計を使用した段階熱消磁実験の結果、最も多く見られた段階熱消磁実験おけるサンプルの代表的な磁化挙動は、約200℃から350℃の間にやや不安定な直線磁化成分が消去され、それ以上の温度帯においては残留磁化の直線成分を認識できないというものである。その低温部における、やや不安定な方向は北向き偏角・中庸な下向き伏角であり現在の地球磁場と同じ方向を示している。このことから多くのサンプルが中生代当時の磁化成分を保有しておらず、地質学的に最近の地球磁場の方向に塗り替えられていることが明らかとなった。特に三畳紀のサンプルにおいては殆どのサンプルがこの磁化挙動であり、岩石形成当時の磁化方向を得ることはできなかった。ジュラ紀のサンプルにおいては、5地点を除き、三畳紀の磁化挙動と同一であった。5地点から得られた、580℃までの高温部において安定な直線挙動を示した残留磁化成分は、その磁化の獲得時代を判定する褶曲テストに95%の統計的信頼度で合格した。このことは、この5地点が岩石形成当時である前期ジュラ紀の自然残留磁化を有していることを示している。この古地磁気方向から、北中国地塊の前期ジュラ紀を代表する前期ジュラ紀の古地磁気極を求めることが可能となった。
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