研究分担者 |
中村 美浩 北海道大学, 電子科学研究所, 助手 (50155868)
中路 貴彦 北海道大学, 理学部, 教授 (30002174)
永井 信夫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (80001692)
BRUALDI RICH ウィスコンシン大学, 数学科, 教授
SCHNEIDER HA ウィスコンシン大学, 数学科, 教授
HANS Schneider University of Wisconsin, Department of Mathematics, Professor
RICHARD Brualdi University of Wisconsin, Department of Mathematics, Professor
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研究概要 |
1. 行列は,殆どの数学分野に登場し,そこに現われる行列を解析することが,問題解決の要点となる場合が多い。しかし,行列論そのものは古典的な研究対象であるため,行列論の研究は軽視されがちであった。 本研究では,通常行列の応用の対象である解析学の立場から,逆に解析学の手法を用いて,行列の解析を行うことを目的とする。特に,関数解析学的な問題意識をもって行列の諸問題を検討するとともに,関連する対象をグラフ理論及び組合せ理論の視点によっても解析し,その成果を信号処理の理論に応用しようとして出発した。 (1) 安藤 毅は,行列のHadamard積の研究,行列に関する極値問題の研究および行列の数域の研究を担当するとともに,研究全体を総括した。 (2) Hans Schneiderはグラフ論的行列解析の研究を担当した。 (3) Richard Brualdiは組合せ論の手法による行列解析の研究を担当した。 (4) 永井信夫は,行列解析の信号処理への応用を担当した。 (5) 中路貴彦は,Hankel行列とそのH^∞制御の関連の研究を担当した。 (6) 中村美浩はHankel及びToeplitz行列の研究と,行列のmajorizationの研究を担当した。 2. 以下に,この研究による成果について記す。 (1) 安藤 毅は,Handamard積を作用素として解析し,その数域半径に関する作用素ノルムを完全に特徴付けた。また,行列のある凸集合のすべての端点の完全な解析的な記述に成功した。Golden-Thompson型の不等式を補う不等式をmajorizationを基礎に展開し一般原理を確立した。 (2) Hans Schneiderは,行列論の視野から,重み付きの有向グラフのbalancingの条件を得た。また,0-パターングラフのパターンの高さと指標の間の関係を確立した。 (3) Richard Bruadliは,組合せ的手法で,自己双対な符号列の数え上げに成功し,また符号だけで行列の可逆性が決まる配置に関しての基本的な結果を得た。 (4) 永井信夫は,対応する行列の分解に基づいて,2線条ラインを次々に取り去ってデジタルフィルタの構成に成功した。 (5) 中路貴彦は,Hankel行列を一般化したHankel作用素と極値問題の関連を確立し,特別なHankel作用素を連続にする加重関数を決定した。 (6) 中村美浩は,majorizationに関しての行列の極値問題を関数空間の距離に関する問題との関連で定式化して構造を解明した。特殊な規則による行列積のノルムの評価を確立した。また非有界な関数によるToeplitz行列の積が有界になる条件を得た。 3. この研究期間中の1991年に,研究代表者安藤 毅は,北海道大学で国際研究集会「作用素論と複素解析」を主宰し,関数解析分野の研究者等と行列解析の関連を討議した。研究分担者Richard Brualdiは,数学及びその応用研究所の1991年特別研究計画として,世界中から行列解析の研究者を広く集めて,「応用線形代数」を主宰した。また,研究代表者安藤 毅と研究分担者永井信夫は,1991年に神戸で開催された国際会議「回路網とシステムの数学的理論」の組織委員に加わり,行列解析の回路網理論,システム理論への応用の振興に尽くした。 研究代表者安藤毅は,当該研究成果の一部を1992年8月にリスボン(ポルトガル)で開催された国際線形代数学会およびウィリアムズバーグ(アメリカ合衆国)で開催された研究集会「数域と数域半径」において発表した。
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