本研究は、アレルギ-低減化食品開発の基礎研究として、コメのアレルゲン活性を低減化させることを目的としたものである。実験の最初において、コメアレルゲン蛋白質について、そのアレルゲン活性におよぼす加熱処理又は酵素処理の影響について検討を行った。その結果、コメアレルゲン蛋白質はアルカリ条件下での加熱により、抗原性が著しく低下することが認められた。また、酵素としてはトリプシン、キモトリプシンには抵抗性を示すものの、ペプシンにより比較的容易に分解することが認められた。これらの知見はアレルギ-低減化食品の開発に有用なものであるが、直ちにこの知見を実用化に結びつけることはし難いものであった。よって、別の観点から低減化を行う目的で、まず胚乳中におけるアレルゲン蛋白質の存在状態について検討を行い、この蛋白質がコメの主要な貯蔵蛋白質であるプロラミンやグルテリンとは異なり、プロティンボディには含まれていないことを見出した。このことは、本アレルゲン蛋白質の抽出性が、他のコメ蛋白質とは大きく異なる可能性を示すものである。よって、コメアレルゲン蛋白質の抽出除去を目的として、米粒に対する超音波処理の影響について実験を行った。その結果、一夜浸漬した後に超音波処理を施すことにより、粉砕された米粒のみならず、インタクトな米粒からもアレルゲン蛋白質が可溶化、抽出されることが明らかとなった。また、このような超音波処理の効果を調べるために、超音波処理した米粒と未処理米粒のアレルゲン蛋白質の残存量をELISAを用いた競争阻害実験により比較したところ、超音波処理により約88%のアレルゲン蛋白質を除去しうることを見出した。この場合、プロラミン、グルテリンなどのコメ主要貯蔵蛋白質のほとんどは米粒中に残存しており、電顕観察によるプロテインボディの状態も超音波処理によってほとんど変化しないことが確かめられた。
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