研究分担者 |
藤原 賢哉 広島大学, 経済学部, 講師 (30229067)
宇惠 勝也 愛知教育大学, 教育学部, 助教授 (10203423)
地主 敏樹 神戸大学, 経済学部, 助教授 (60171089)
山上 宏人 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00094524)
石垣 健一 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (40047486)
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研究概要 |
1970年代に先進各国は高インフレ-ションに直面した。マクロの金融政策の焦点はインフレ対策となり,各国は何らかの「マネタリズム」的政策を採用し,貨幣集計量を重視するようになった。「マネタリズム」的政策の具体的内容(どの集計量を使うか,目標値か目標範囲か,コントロ-ル方法など)は各国毎に異なるが,「マネタリズム」的政策による高インフレをほぼ終息させた点は,多くの国に共通している。細部の異同の比較検討が現在進行中である。他方で,高インフレの影響はミクロ的な金融制度の側面にも及んだ。金融当局による規制の度合いが高く,各金融商品の収益率もかなり硬直的に決定されていた金融システムが,高インフレによる金利体系の歪みや,通信・情報技術の進歩によって,崩され始めたのである。この面での政策的対応は,迂余曲折はあったにせよ,金利自由化・業際自由化をはじめとする諸直接規制の撤廃=金融自由化が趨勢となった。この面の国際比較は一年度に行った。このミクロ面での政策行動=金融自由化は,マクロ面での「マネタリズム」的金融政策の基盤を崩す副作用を伴なった。貨幣集計量の需要関数を不安定化させ,当該集計量のタ-ゲットとしての信頼性を失わせてしまったのである。高インフレも終息したので,各国は「マネタリズム」的政策を放棄し始めた。「マネタリズム」的政策放棄の理由の比較も現在進行中である。最後に,各国の金融政策の現状及び展望であるが,特定の貨幣集計量をタ-ゲットとする「マネタリズム」的政策は採用しないが,金融政策の最終目標は物価安定に絞ってゆく,というのが一つの方向であることが明らかになってきた。カナダ・ニュ-ジ-ランドや,EC中央銀行構想は,このライン上にある。他方で,雇用・成長の促進と外為レ-トの安定化など,物価安定以外の最終目標を相対的に重視する国は日米両国に絞られつつあるという状況である。
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