研究概要 |
1.野尻湖層の層序 鍵層となる火山灰層の分析により,野尻湖底ボ-リング試料の層序を明らかにすることができた。これにより層序区分を再検討し,野尻湖層を再定義することになった。野尻湖層の火山灰層序を検討する上で重要な役割を果すと思われる琵琶湖底の中・上部更新統〜完新統火山灰層序を明らかにした。 2.地磁気の変化 野尻湖底ボ-リング試料の磁化を測定したところ,2万年以後の地層はすべて正帯磁であった。逆転磁化を示すのは,下部野尻湖層Iないし貫ノ木層堆積期である可能性が強くなった。 3.古気候 2万年前の最終氷期最盛期には,花粉化石のほとんどが亜高山性の針葉樹のみであり,2万年前と同程度ないしやや暖かかった5〜6万年前の最終氷期初期には,日本の氷河が2万年前より低い位置に形成されていた。これらのことは,5〜6万年前の方が多雪であり,2万年前は寒冷で雪が少なく,乾燥していたことを示す。 一方,現在の気象デ-タの解析により,野尻湖の水循環・収支,とくに蒸発散量を明らかにしつつある。 4. ^<14>C年代測定 交付申請書では, ^<14>C年代の測定を計画していたが,その後,名古屋大学の加速器質量分析による野尻湖層の年代値が出るにおよんで,われわれの測定計画は不要となった。新しい年代値によって,2万年前以後の堆積速度が具体的に検討できるようになった。
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