研究概要 |
1.湖成層と風成層の対比:野尻湖周辺に分布する最上部更新統は、風成の野尻ロ-ム層と水成の野尻湖層である。このうち2万年前以後に限っていえば、両層を対比できる鍵層は、下位からヌカI,ヌカII,シオツブ,フカIII,アジシオである。 2.地形からみた地穀変動:野尻湖周辺には、いくつかの丘陵や低地があるが、これらの配列には、一定の方向性がある。おもな断層は古海断層、荒瀬原断層、六月断層(新称)がある。このうち六月断層は、仲町丘陵と池尻川低地を境するもので、仲町丘陵が著しく隆起したことを示している。また凹地列形成のテクトニックスを考えた。 3.最上部更新統の地層攪乱現象:最上部更新統の、モヤ層準とよんでいる部分は、火山灰層の比較的少ない環境で、一次的な火山灰に、風などによって運ばれた2次的な火山灰や砕屑物がまじりながら順次形成されたものと考えられる。乾痕(野尻湖地質グル-プ、1980)は、日本やアイスランドの構造土(野村、1984)と類似点をもっている。 4.2万年前以降の地磁気:野尻湖層の磁化から、2万年前以後には、逆帯磁が見つからず、むしろ約5万年前の下部野尻湖層Iの下部に逆帯磁が発見された。 5.最寒冷期以後の気候:上部野尻湖層II「ヌカI」から上部野尻湖IIIの中部まで、トウヒ属・モミ属・ツガ属帯であり、2万年前の最寒冷期に対応する。この後はブナ・コナラ帯、マツ・スギ属帯と変化する。 6.年代測定:名古屋大学の加速器質量分析による^<14>C測定で、従来の値よりも1万年前後古い値がえられ、野尻湖周辺の自然史・人類史の年代がぬりかえられることになった。
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