Nd-Fe-B系磁石合金は三元金属間化合物Nd_2Fe_<14>Bの高い飽和磁化と結晶磁気異方性とを利用して主に焼結及び急冷凝固法において作製されている。1988年7月にPr_2Fe_<14>Bに熱間加工性を有することが認められ、これを積極的に活用した鋳造・熱間加工・熱処理のプロセスによって新永久磁石材料の開発が大いに期待されつつある。本研究においては、種々のR_2Fe_<14>B(R:希土類元素、主にPr)金属間化合物の熱間変形挙動を広範な温度、ひずみ、ひずみ速度範囲で調べ凝固組織と加工性および加工組織との関係、各プロセッシングによって規定される金属組織と磁性との関係を明確にすることで、三元金属間化合物の塑性変形による新プロセス、希土類永久磁石の材料設計・材料開発の基礎を確立することを目的とした。無拘束で熱間変形させた場合変形過程は3段階に分類される。初期過程では急激な荷重の立ち上がりに続く応力緩和は微細な割れを誘起し、引き続く定常な低荷重変形ではこの割れは液相で緩和される。この過程で異方性が生じ強加工が可能となることを明かにした。最終階段では過度の変形に伴う荷重の再上昇が生じ破断に至る。均質化熱処理の意義は初晶Feの固溶であり、またその温度を低くすることで、Pr_2Fe_<14>B結晶粒を微細化させ高保磁力・高エネルギー積が実現できることを示した。600℃の時効熱処理はPr_6Fe_<13>Cuの生成による高保磁力化をもたらすことを初めて示した。また、Pr_6Fe_<13>Cuは正方晶で118℃にネール点を有する反強磁性であることを初めて示した。この相はL+Pr_2Fe_<17>→Pr_6Fe_<13>Cuの包晶反応によって645℃で生成することを明らかにした。今後強磁性相と反強磁性相のカップリングによる永久磁性材料の可能性を示した。また、Nd及びPr系希土類永久磁性材料における新たな粒界相R_<11>Fe_<87>B_2の発見、粒界相生成機構の解明が進んだ。
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