研究概要 |
1.人びとのライフコースにおいて類型的に現われてくる,ライフ・チャンスが,それぞれの生活システムにおいて構造化されている種々の集団とその集団をキー・ステーションとするさまざまな生活資源の流れ(布置状況)によって具体化し,その生活場面における人びとの地位に応じて特定されていくことに注目しながら,人びとの地域間モビリティと成層モビリティを軸として,就学チャンス,就業チャンス,結婚チャンス,居住チャンス,医療チャンス,購買チャンス,レジャー・チャンス,政治チャンスなどの各種個別チャンスがどのように認識され,活用されているか,という点について基源的なデ-タを収集した。 2.人びとの生活を具体的に追求してみると,各人の「運」と各人にとって文字どおり潜在的な可能性として存在する「不可識」の部分を除いて,ライフ・チャンスの把握が人びとのコミュニケーション構造,とくに情報源と情報処理能力に依存していることが明らかになった。 3.人びとの情報処理過程のパターンおよびその量的な特徴は,人びとのライススタイルの相違によって異なってくるのであって,このライフスタイルを各人の生活を方向づける価値基準だけでなく,生活システムを構成する諸資源の布置や人間関係の特徴や生活規範と生活目標などのコンプレックスとして把握する試みを行った。 4.人びとのライフスタイルは,こうして生活システムの基礎をもちながら成り立っていることが明らかになったが,単に個々人の生活の特徴をパターン化するだけでなく,それぞれのライフスタイルに応じて,人びとが自分のコミュニティにどのように関わりあっているかということについて明らかにしてみること,とくに,それが人びとのライフチャンスの在り方によってどのように異なってくるかということを追求していくことが次年度の課題となる。
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