研究分担者 |
長濱 裕幸 静岡大学, 理学部, 助手 (60237550)
清水 以知子 東京大学, 理学部, 助手 (40211966)
金川 久一 東京大学, 理学部, 助手 (40185898)
鳥海 光弘 東京大学, 理学部, 教授 (10013757)
松田 時彦 東京大学, 地震研究所, 教授 (70012896)
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研究概要 |
シュ-ドタキライトは,断層帯の内部または近傍に脈状に産する圧砕岩で,超微粒マトリックスと破砕岩片からなる。多くの研究者は,この岩石は地震時の急激な断層運動に伴う摩擦溶融によって形成されたと信じている(メルト説)。しかしその一方で,この岩石のマトリックスは超微粒粉砕岩片からなるとする粉砕説も古くから知られており,本研究が始まった時点では,どちらの説が正しいのかわからないのが実情であった。この科研費を用いた研究では,世界の7ケ所から採取されたシュ-ドタキライトの変形微細組織を解析するとともに,高速まさつ試験機を設計・製作して,シュ-ドタキライト形成のプロセスを実験的に調べた。主要な研究成果は次の通りである。また,野外地質調査によって新たなシュ-ドタキライトの産地を探したが,見つからなかった。 本研究では,シュ-ドタキライトの起源を解くための全く新しい方法を思いついた。オ-ストラリア中央部産のシュ-ドタキライト中に散在する破砕岩片は,フラクタル次元が1.5の粒径分布をもっている。この粒径分布から細粒部の占める割合を見積ると4〜5%以下になる。つまり,粉砕岩片として説明できる細粒部は実際の細粒部の1/10以下ということになり,粉砕説は否定された。長年の懸案がこれで一気に片付いたことになる。 岩石の高速摩擦実験では,摩擦溶融によってシュ-ドタキライトに極めて良く似た断層岩を実験的に形成することができた。この実験的研究によって,摩擦溶融は非平衡な現象であること,摩擦溶融においては低融点鉱物がより多く溶融すること,この選択溶融によってシュ-ドタキライトの細粒部はもっとも溶融しにくいシリカに乏しくなること,シュ-ドタキライト中に散在する破砕岩片の形成においては,熱クラックが重要であること,などが判明した。それらはいずれも新知見である。
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