研究概要 |
先進諸国における産業の発達にともない,全地球的な環境保全の問題が大きく取り上げられるようになった。その代表とも言えるのが二酸化炭素による温暖化とオゾン濃度減小による癌の発生を含む生態系の変化である。オゾン濃度減少対策については観測やシミュレ-ション結果にもとずき,ハロン・フロン系物質の放出制限が行われるようになった。然し、それは減少速度を低下させる対策であって,積極的にオゾン層の回復を目指す可能性を検討するのが本研究の目的である。 自然界では太陽光に含まれる紫外線によって酸素が解離され酸素原子になり,原子状酸素が酸素分子と結合してオゾンが形成される。工業的には1〜3気圧のもとで無声放電によって生成され,その機構が詳しく知られている。これをオゾン層と云われる170〜0.5Torrの大気に当てはめた場合にどうなるのか,更に低酸素濃度の大気中で酸素原子一酸素分子の衝突頻度を挙げるための手段を考えるのが今回の計画である。 オゾン層では地上15〜40kmで濃度が大であり,比較的圧力の高い領域である。そこで50〜170Torr(高度換算25〜15km)で電気的なオゾン生成効率を測定し始めた。その結果,気圧依存性は予想されたよりも小さく好ましい結果と言える。低気圧下の放電で紫外線等の発生があり,光の効果がより大であるためと考えられる。また,オゾン収率(1kwh当りのオゾン生成量)は通常のオゾン発生装置のそれよりも小さかったが,予想された程の小さい値ではなかった。 以上,予備的実験における結果であるが,地上とは異った装置上の最適条件を求めることが必要であると,改めて確認された。
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