研究概要 |
これまで酸化物高温超伝導体の合成には主として固相反応法が用いられてきたが、固相反応は反応時間、生成物の均質性、成形性などの点で問題があり、これに代わる液相からの合成プロセスの検討が進められている。本研究では、液相反応を利用して種々の形態の超伝導体を作製するための最適プロセスの確立を目的としており、今年度は以下のような成果を得た。 1.BiーPbーCaーSrーCuーO系に少量の添加物(In,Mo,Nb,Sb,Sn,Ta,Te,V,W等)を加えた超急冷ガラスを前駆体とする超伝導体を作製し、その超伝導特性を測定した。添加物は熱処理時の部分溶融過程に影響を及ぼし、このことが高温超伝導相の生成をも支配することが明らかになった。 2.BiーPbーCaーSrーCuーO系超急冷ガラスの結晶化に対して、核生成過程を制御することで臨界電流密度Jcの向上を試みた。まず核生成速度の大きい温度域での熱処理により核生成を促進させ、その後結晶成長速度の大きい温度域での熱処理により結晶成長を促進させるプロセスがJoの向上に効果のあることがわかった。 3.種々の添加物を含むビスマス系ガラスの粘性挙動を検討した結果、Pbの添加により、ファイバ-化が容易になることが予測された。実際、赤外線集光加熱炉を用いることにより、超伝導体前駆体としてのガラスファイバ-の作製に成功した。 4.融液凝固法による超伝導厚膜の作製プロセスの最適化を試みた。その結果、融液状態から熱処理温度への冷却速度の制御が重要で、この速度が大きいほど厚膜の超伝導特性が向上することが明らかになった。 5.噴霧熱分解法により融液濃度を変化させてビスマス系超微粒子の作製を試みたところ、組成ずれのない球形の超伝導微粒子が直接合成でき、また粒径は溶液濃度により容易に制御できることがわかった。
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