植物の繁殖投資と資源分配機構

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454006
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 河野 昭一 京都大学, 理学部, 教授 (30019244)
• キーワード: reproductive investment / resource allocation / nitrogen economy / reproductive strategy / ネギ属植物 / 林床植物

研究概要

1.当初計画した研究対象の内、ユリ科のノビル、ギョウジャノニンニク、フッキソウに関してはC,Nの分配パタ-ンの分析を終了した。特にフッキソウについては総N,タンパク態N,可溶性N,遊離アミノ酸の各器官別の動態に関する分析を終了し、その結果、生育環境内における光環境の変動に対応した著しい代謝機能の変化と、Nの分配パタ-ンの存在が明らかにされた。最も注目に値する発見の一つは、光資源などの乏しい夏期においては、内生的代謝機能の低下と対応したアマイドであるアスパラギン酸の著しい地上器官の葉、茎などの大量の蓄積が見いだされたことである。その結果はすでに学会誌(Yoshie et al.,1990参照)に発表された。
2.ノビル、ギョウジャノニンニク、カタクリに関しては、各器官へのNの分配パタ-ンと季節消長はほぼ完全に分析された。同じく林床植物のカタクリ、オウレンの2種に関してもNの分配パタ-ンと季節消長は分析された。目下、それらの結果の取りまとめが行われている。ギョウジャノニンニク、カタクリなどの鱗茎をもった林床からは、冬期間の低温期に貯蔵期間である鱗茎内に遊離アミノ酸γーメチレンアミノ酸の形態で大量のNがプ-ルされている事実が明らかにされた。
3.ミソソバ、タネツケバナ、カタバミ、ナタネなどの一年草を用いた施肥レベル、光量、日長などを変化させた制御環境下における予備実験はすべて予定どおり終了した。目下、C・Nなどの分配パタ-ン分析のための実験の準備を鋭意進めている。

研究成果

• [文献書誌] Pak,J.ーH.and Kawano,S.: "Biosystematic studies on the genus Ixeris (CompositaeーLactuceae) I.Fruit wall anatomy and its taxonomic implications" Acta Phytotax. & Geobot.41. 43-60 (1990)
• [文献書誌] Pak,J.ーH.and Kawano,S.: "Biosystematic studies on the genus Ixeris (CompositaeーLactuceae) II.Karyological analyses" Cytologia. 55. 553-570 (1990)
• [文献書誌] Kawano,S.,Hara,T.,Hiratsuka,A.,Matsuo,K.and Hirota,I.: "Reproductive biology of an amphicarpic annual Polygonum thunbergii (Polygonaceae):Spatioーtemporal changes in growth,structure and reproductive components of a population over an environmental gradient" Plat Species Biology. 5. 97-120 (1990)
• [文献書誌] Ohara,M.,Kawano,S.and Utech,F.H.: "Differentioation patterns of reproductive systems in the genus Trillium" Plant Species Biology. 5. 73-81 (1990)
• [文献書誌] Yoshie,F.,Arai,H.,Nakashima,H.and Kawano,S.: "Seasonal changes in nitrogen fractions of Pachysandra terminalis,a forest evergreeen chamephyte" Physiologia Plantarum. 79. 7-14 (1990)
• [文献書誌] Kawano,S.(ed.): "Biological Approaches and Evolutionary Trends in Plants" Akademic Press,London, 417 (1990)