研究概要 |
真核細胞DNA複製は核膜及び核マトリクスと密接に関連する。我々は複製反応の微小環境としてリン脂質が重要であると考え、DNAポリメラ-ゼα,β,γとリン脂質を共存させると、ホスファチジルイノシト-ル(P1)及びカルジオリピン(CL)が酵素タンパクと相互作用して反応を抑制する事、さらにヒトCーmycARSを用いた試験管内複製系に対しP1及びCLが強い阻害を示すことを見出した。後者の場合には系中に存在するトポイソメラ-ゼIをこれらリン脂質が抑制することも明らかにした。これらの研究を更に発展させるため本申請により購入したタンパク用液体クロマトグラフィ-(FPLC)を用いて次の実験を行った。動物細胞核にはP1の含量が比較的に高いことから、細胞膜に於けると同様、核P1代謝が核機能の調節に関わっている可能性を考え、P1の代謝産物P1P,1P_2,1P_3がDNAポリメラ-ゼαに及ぼす可能性を検討した。ラット再生肝DNAポリメラ-ゼはPーセルロ-スで2つに分れ、低活性型が1P_2により活性化される。しかしこれをゲル3過及びモノQカラムで精製すると1P_2依存性は失われ、モノQカラム非吸着画分を加えると1P_2依存性が回復した。すなわち1P_2は特定のタンパク因子を介してポリメラ-ゼαを活性化すると考えられこの因子の精製同定を急いでいる。なおP1代謝産物はプライア-ゼに対しては影響を与えなかった。一方、核内リン脂質代謝に関与する酵素としてP1を1P又は1P_2に分解するホスホリパ-ゼC(PLC)を精製したところ4種の活性型が得られた。それらの一つ88KPLCは肝再生のS期の特異的に上昇する事、腹水肝癌において特に高い活性を示すことから、細胞増殖サイクルのS期の進行に重要な役割を果している事が示唆された。
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