癌ミサイル療法の臨床応用を目ざしたモノクローナル抗体結合制癌剤の研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02454318
• 研究機関: 京都府立医科大学
• 研究代表者: 高橋 俊雄 京都府立医科大学, 医学部・第一外科, 教授 (50079828)
• 研究分担者: 萩原 明郎 京都府立医科大学, 第一外科, 助手 (90198648) ; 山口 俊晴 京都府立医科大学, 第一外科, 講師 (90111327)
• キーワード: ミサイル療法 / モノクローナル抗体 / キメラ抗体 / 大腸癌 / HAMA

研究概要

本年度は癌のミサイル療法を実際患者に応用し、効果、副作用および今後の問題点について検討した。さらにマウスモノクローナル抗体からこれをヒト型に変換すべくキメラ型モノクローナル抗体を作製しこれらについて検討を加え、以下のような成績が得られた。
(1)原発性大腸癌およびその肺、肝転移、膵癌など計80例に対してわれわれがこれまで検討してきたモノクローナル抗体A7-NCSを動注、静注などの投与法で投与した。肝転移例では腫瘍の縮少を認めた例があり、遠隔成績では化学塞栓療法とほぼ同様の効果が認められたが、これを凌駕する成績は得られなかった。重篤な副作用は認められなかった。投与例全てにHuman Antimouse Antibody(HAMA)が産生された。
(2)HAMAを克服するためにわれわれはHAMAが産生されるまでの一週間以内にA7-NCSを投与する短期大量投与について検討した。副作用なく大量の投与が可能でHAMA克服の1つの方法と考えられた。
(3)HAMAに対するもう1つの方法として、マウスモノクローナル抗体A7を抗体認識部分のみを残し、他はヒト型としたキメラ型モノクローナル抗体A7を開発することに成功した。本抗体の各種ヒト癌との反応性について検討を行ったところ、大腸癌、膵癌等とは強い反応をを示したが、食道癌、悪性リンパ腫等とは反応せず、マウスモノクローナル抗体A7とほぼ同様の反応性を示した。
(4)キメラモノクローナル抗体A7とネオカルチノスタチン(NCS)との複合体の作製に成功した。in vitroにおける殺細胞効果はNCS単独より、はるかに強い効果を示した。

研究成果

• [文献書誌] 山口 俊晴: "腫瘍マーカーと免疫療法" Modern Physician. 12. 1055-1058 (1992)
• [文献書誌] 山口 俊晴: "モノクローナル抗体結合抗癌剤に的療のミサイル療法の研究" がん治療のあゆみ. 11. 133-137 (1992)
• [文献書誌] 高橋 俊雄: "ミサイル療法" 医学のあゆみ. 186-189 (1992)
• [文献書誌] 山口 俊晴: "胃癌術後のリンパ節再発摘出後長期生存の一例" 治療学. 26. 1406-1408 (1992)
• [文献書誌] 宮垣 拓也: "^<131>工標機A7による大腸癌局所再発単のradioimmunoimeging" 日本消化器外科学会雑誌. 25. 2818- (1992)
• [文献書誌] 山口 俊晴: "モノクローナル抗体と用いた癌転移の診断と治療" オンコロジア. 26. 21-25 (1993)
• [文献書誌] 山口 俊晴: "がん特異モノクローナル抗体を利用したリンパ節転移の的中診断法の開発" INNERVISION. 7. 35-36 (1992)
• [文献書誌] Kitamura,K.: "Local administration of monclonal antibody-Drug conjugate" Cancer Research. 52. 6323-6328 (1992)
• [文献書誌] Noguchi,A.: "Enhanced tumor localization of monoclonal antibody by treatment with Kininase Inhibitor." Jpn.J.Cancer Res.83. 240-243 (1992)
• [文献書誌] Noguchi,A.: "Preparation and properties of the immuno-conjugate composed of anti-human colon cancer monoclonal antibody and MMC-dextran conjugate." Bioconjugate Chemistry. 3. 132-137 (1992)
• [文献書誌] Otsuji,E.: "Expression of the cell surface antigen detected by the monoclonal antibdy A7 in pancreatic carcmnoma cell line." Surgery Today. 22. 351-356 (1992)
• [文献書誌] Otsuji,E.: "Biodistribution of monoclonal antibdy A7 and its F(ab′)2 fragment in athymic nude mice beareing human pancreatic carcinoma." J.of Surgical Oncology. 50. 173-178 (1992)
• [文献書誌] Kitamura,K.: "Efficacy and specificity of a monoclonal antibody-drug conjugate in chemotherapy by intratumoral injection." Jpn.J.Cancer Res.83. 769-774 (1992)