研究概要 |
平成2,3年度の研究により、自己癌に代わる同種癌細胞と担癌患者末梢血リンパ球との混合培養およびrIL-2との培養で自己癌特異的CTLが誘導されること、その臨床応用では、誘導CTLの癌栄養動脈を介した戻し注入で原発部位における癌縮小効果が明らかにみられた事を報告したこの同種癌細胞との混合培養で誘導されるキラー細胞を臨床に用いることが出来るという事実は自己癌細胞を用いた方法の限界を越えることが出来た事を示し、重要名結果であると判断する。しかし、癌の完全制御は他の治療法にも云えるが、このCTL療法単独では困難であることも確かである。平成4年度は集学的治療の中でのこのCTL療法の位置付けを検討した。即ちCTL治療、低濃度抗癌剤、放射線治療、手術を組合せたプロトコールをつくる事を目的とした検討を行い、その手がかりを得る事ができた。まず試験管内で、癌細胞を種々の濃度で前処理しておくと抗癌剤低濃度でCTL活性の増強がみられることがわかった。又、機序は不明であるが、CTL治療による放射線感受性の増強がみられ、低線量で強い癌縮小効果が観察された。低能度抗癌剤・CTL・放射線照射・手術というプロトコールによって治療した上顎癌6例中4例CR、2例PR、舌癌3例中3例PR歯齦癌1例PRと高い効果を得、この効果は手術的にも確認できた。又、上顎癌6例全例がstage IVであり、内4例は眼球への癌浸潤がみられたが、低濃度抗癌剤、CTL、放射線の併用による効果によって眼球摘出が免れた。このような手術の小規模化で、より高いQOLを得ることも出来ることが示唆された。この方法の樹立のためには、今後さらに症例を増すことが必要である。
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