研究概要 |
平成2,3,4年度3年間における本研究の成果を以下にまとめる。 人癌細胞に対し、自己リンパ球は抗原として認識、免疫応答の結果自己癌傷害活性が誘導されることが判っている。それはMHC拘束性ある自己癌特異的キラー細胞(CTL)であるが、自己癌と共通の他人(同種)の癌細胞抗原を認識、免疫応答の結果自己癌を傷害するCTLが誘導される事実を証明した。新鮮あるいは株化扁平上皮癌細胞、腺様嚢胞癌細胞等をマイトマイシンC処理し、他の担癌患者末梢血リンパ球と混合培養し、更にrIL-2と培養すると刺激原として用いた病理組織学的に同一の自己癌を傷害する活性化リンパ球(キラー細胞)が誘導され、cold target inhibitionの結果や、MHC拘束性のあることから特異性の高いCTLが誘導されたと判断された。この誘導されたCTLの臨床応用を目的に、まず、癌増殖局所に戻し注入し、癌縮小効果を観察した。この臨床応用は頭頚部に高率に発生する扁平上皮癌を対象とし上顎癌、歯齦癌舌癌、下咽頭癌、喉頭癌患者のそれぞれの栄養動脈を介して注入した。その結果、CTL単独のCR,PR効果は14例中7例(50%)であり、1例の肺転移巣に対する静脈注射の戻しでそれはPRであった。自己癌との混合培養によるCTL誘導に限界のあることから、同種癌細胞を利用できることは臨床適応拡大となり、治療学的に重要な結果を得たと判断した。しかし、本CTL療法単独による完全な癌制御は困難であることも確かであり、集学治療の中での本治療法の位置付けを検討することが重要である。平成4年度にはその検討を行い、手がかりとなる結果を得た。即ち、低濃度抗癌剤の使用を先行させるとCTLの効果が増強し、又、CTL治療の後、放射線感度が増強されることが判った。このプロトコールによる実際の臨床応用では上顎癌6例中4例がCR,2例がPRで100%、舌癌3例中PR3例で100%、歯齦癌1例でPRと高い効果が手術的にも確認された。眼球摘出を免れ、高いQOLを得る可能性も示唆された。
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