研究概要 |
胎児の子宮外保育を安定して行なうための基礎実験をヤギ胎仔を対象として16回にわたって行なった。今年度は循環条件を安定させ、ガス交換が十分に行なわれている状態での内分泌代謝系の変動をモニタ-の中心とした。またきわめて未熟な児を保育することができるかどうかを検討する目的で体重1000g未満の胎仔の長時間保育を試みた。その結果、以下の結果がえられた。 (1)血液の酸素飽和度を連続モニタ-するOXIFIETRIX-3を購入し、これと既存の電磁流量計をくみあわせることで、胎仔のガス交換状態、酸素消費の状態を連続的にモニタ-することが可能となった。 (2)胎仔の内分泌系の経時的変動を検討した結果、(Epinephrine,Novepinephrine,ACTH,Cortisol,Arginine Vasopvessin,T_3,T_4を測定した。)、子宮外保育開始後48時間以内に各ホルモンは子宮内胎仔のレベルにまで低下し、子宮外保育環境に一定の適応を示すことが明らかになった。 (3)胎令95日(満期148日)、体重500gのヤギ胎仔を188時間にわたって子宮外保育することに成功した。これにより、いわゆる超未熟児を子宮外保育する可能性が開けた。本システムによる管理に要する労力は少ないものではないが、500gの超未熟児を人工呼吸器を用いて管理するよりは容易であると思われる。また胎仔自身の状態を考慮しても、人工羊水中で保育する方が短期的には状態の安定がよりはやく得られる。この結果は本システムの臨床応用の可能性を示唆するものである。
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