本年度は回転非圧縮性流体の安定性を調べるための定式化を改良し、さらにそれをいろいろなトポロジ-の天体に適用したところ、これまでに考えられなかった不安定性が起きる可能性ができた。 非圧縮性流体では、密度の時間変化の項が存在しないため、圧縮性流体の場合とは異なった定式化が必要となる。線形安定性解析から出てくる固有値問題が非線型固有地問題であって、そのまま解くことは難しい。そこで、関心のあるのは表面の形状が軸対称からずれるものであるので、固有関数の一つである表面の形状の変化のうちの赤道面での値を指定することができる。このことによって、問題が非線型固有値問題から単純な非線型連立方程式となる。したがって、ニュ-トン法を使って非線型連立方程式を解くことによって、固有値と固有関数を求めることが可能となる。この手法はセキュラ-不安定性に関しては大変な応用性の広いものであって、一般相対論的な回転星の安定性を調べるのに拡張することができる。 この定式化を非一様回転している密度一様な天体に適用した。その結果非一様回転体ではセキュラ-不安定の起きるモデルのT/W(T:回転エネルギ-、W:重力エネルギ-)の値や、PapaloizouーPringle不安定が起こるモデルを指摘することができるようになった。ところで、この定式化から、非角運動量が一定の場合以外では、線形安定性の基本方程式系が固有値の値によって楕円型と双曲型の二つの型になり得ることがわかった。したがって、安定性を解析するには型によって異なる処方を用いることが必要となる。実際、一様回転でのマクロ-リン楕円体では、rーモ-ドの不安定化の傾向が見られたが、これが本当か否かを現在検討中である。
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