Si中に水素を導入し、不純物を不動態化する機構を明らかにするのが本研究の目的である。初年度である今年度は主にSi中へ水素を導入する技術の確立を目指し、ほぼ当初の計画は達成された。 P型のSiに表面より2μmの深さまでBを5×10^<19>cm^<-3>イオン注入した試料を用いた。試料を高周波放電した水素プラズマ中に入れて、処理をした。処理前後で低抗の測定を行い、低抗の上昇が認められた。水素処理の最適条件を見い出すため、試料の前処理(エッチング)、試料温度、水素のガス圧、処理時間、高周波出力、直流電圧の印加等について詳細に実験を行った。その結果、再現性よく、高効率で水素を導入する条件を見い出した。 低抗測定のみでは水素の効果であることが確かでないので、赤外吸収を併せて行った。BーHの振動モ-ドに対する吸収が観測され測定温度の低下にともない、吸収ピ-クの成長が見られた。これにより水素がB近傍に係留されていることが明確となった。 計画をしていたその他の実験については未だ成功していない。ラマン散乱は実験を行ったが、Siの格子振動を測定できていない状態である。一方DLTS法についてはまず室温でのCV測定を行っているが、ショットキ-障壁をうまく作ることができず、結果が得られていない。赤外吸収に対する一軸性応力の印加については未だ計画の段階で実行に移していない。 以上水素の導入技術を確立するという第一段階は乗り越えたが、新しい知見を得るには至っていない。
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