研究概要 |
本研究では今日地球全体で大きな問題となっている異常気象現象の一つと考えられる日本東岸の親潮の異常な南下がその発生の予知を目的として調べられた。今年度の前半の期間では、まず今までのSekine(1988ab)などの研究経過をまとめ、さらに現実に近い形でモデル化した数値モデル実験により冬から初夏にかけて生じる親潮の異常南下は真冬のアリュ-シアン低気圧の南偏した発達とこの期間に津軽暖流の東方への張り出しや黒潮続流から切離した顕著な暖水渦が無いことで、ほぼその予知が可能であることが示された(Sekine,1990)。また、詳細な数値モデルの力学解析により親潮の異常南下は大気大循環の変動に伴う海面応力の変動に対する海洋の順圧応答現象であることを明確にした(Sekine、J.G.R.投稿中)。今年度の後半では大気大循環の変動との関連を二三の視点から調べた。北半球の気圧500db高度面の変動解析から、親潮の南下を生じるアリュ-シアン低気圧の南偏は通常PNAパタ-ンといわれる赤道域のエンソ-現象とテレコネクションを持つ大気大循環の変動の一部として発生していることが判明した(Sekine、J.A.S.投稿中)。また、エクアドル沖に暖水が押し寄せるエル・ニ-ニョ発生の一年後の冬にアリュ-シアン低気圧が南偏して形成されることが判明した(関根・鈴木、海と空投稿中)。一方、オホ-ツク海の海氷面積の変化と親潮の南下との関連を調べ、親潮の南下年にはオホ-ツク全体の海氷面積は平年値より小さく、北海道沿岸の海氷面積は平年値より大きいことが示された。この結果は親潮の南下年にオホ-ツク海内部の循環が強く親潮の低密度化がより強化される可能性を示唆する。今後これらの一つ一つの過程を結びつけることで、親潮の異常南下のメカニズムの全容を明らかにし、予知方法をより確実なものとするよう研究を続行する計画である。
|