研究概要 |
含水鉱物の水の状態を熱力学的に明らかにするために,平衡水蒸気圧温度変化測定(TDEP),断熱型ガス吸着熱測定(AGA),断熱型微小熱測定(AMC)の3つの装置を作製した.特にTDEPは,溝田他(1989)の関発した装置を大幅に改良し,高精度のデジタル圧力計を導入し,測定精度の向上を図った.また,AGA,AMCともにマイクロコンピュ-タ-制御とした.これらの装置を用いて,主としてゼオライト,粘土鉱物等の水分子の吸着・水和に関して測定を行った.この結果TDEPではゼオライト水の配置エントロピ-が基本的に導出できることが明かとなった.1例を示すと,モレキュラ-シ-ブ5Aでは,0.81%脱水したレベル(即ち,極わずか脱水した状態)における水分子の配置エントロピ-が42〜48℃の間で約50JK^<-1>mol^<-1>であった.この値は従来のゼオライト水のエントロピ-の値と比較して合理的なものである.また,このとき,水分子の吸着熱は-55kJ/molであった.この値は,AMCで求められた衣川モルデナイトの水和熱-13〜-19kJ/molと水の凝縮熱-44kJ/molと合わせると調和的である.またAGAで求められた水蒸気の吸着熱-50〜-53kJは僅かに小さいと思われる.これら3つの測定方法は完全に独立であり,互いに,吸着のエンタルピ-が求められクロスチェックができる.しかし,本研究では試料及び時間的制約によって全く同一の条件(脱水量,吸着温度等について)における測定が行えなかったので,完全なクロスチェックは今後の問題である.TDEPではある含水量,温度における微分吸着熱および水分子の配置エントロピ-が導出できるので,ゼオライト水のようなゆるい結合の水の状態を研究するのに適した方法である.しかし,これらいずれの方法も水の含有量を精度良く測定することがより信頼性のあるデ-タを得るための今後の課題である.脱水ー復水課程でヒステリシスを示す場合が見いだされたことも今後の興味有る問題である.
|