研究概要 |
1.装置の改良 購入した電流増幅器とポ-タブルレコ-ダ-を現有装置に組み込んだ.これによりピコアンペアレベルでもマイクロ秒オ-ダ-の時間分解能が得られ,光電流信号とレ-ザ-強度も同時に測定できるようになった.また,現用のNd:YAGレ-ザ-の赤外光(1064nm),可視光(532nm),紫外光(355nm)の3種のレ-ザ-光が同時に照射でき,強度も変えられるように光学系や光学部品を整備した.更に光イオン化セルも改造した.以上のような拡充整備により,当初の計画通りの性能をもつ高感度・高性能の装置が完成した. 2.多光子イオン化のメカニズム ヘプタン中の多環芳香族分子について,紫外光単独で多光子イオン化を行いつつ赤外光を加えると,信号が増幅した.一方可視光を加えた場合には,信号が減少するものも認められた.赤外光,可視光のどちらでも信号が増幅する分子については,同一光子数で比較すると可視光の方が増幅度が大きいという結果が得られた.赤外光はイオン化で生成するジェミネイトイオン対を励起するのに対し,可視光は主としてイオン化前の励起状態を励起していると考えられるが,各々の分子についてより詳細に検討してゆく計画である. 3.超微量計測 試料濃度を変えて検量線を作成した.その結果,アントラセンについてみると,紫外光単独で2.3pg/ml,紫外光と可視光の系で1.7pg/mlという検出限界が得られ,イオン化法では現在のところ世界最高の感度が達成できた.今後更に多くの分子について検討してゆくと共に,実用化を念頭において研究を拡張させてゆく計画である.また高分子固体中でも検討している.
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