1.装置の拡充 本年度においては、広帯域プリアンプを装置に組み込み、時間分解能をナノ秒オ-ダ-まで改善した。更に現有の分光器も組み込み、蛍光信号も測定できるようにした。またセルも改良した。 2.メカニズムの研究 アルカン中におけるペリレンやベンゾ[a]ピレンについて、紫外ー可視ならびに紫外ー赤外の2通りの二波長多光子イオン化について検討した。その結果、ペリレンでは紫外光に赤外光を混合すると光電流が増大するが、可視光を加えると逆に減少し誘導放出がおこるようである。一方ベンゾ[a]ピレンでは赤外光、可視光いずれを混合しても光電流が増大するが、紫外光に対して〜20nsの遅延をかけた場合、可視光では依然光電流の増幅効果が見られるのに対し、赤外光では増幅が認められない。蛍光寿命の測定などから、赤外光はイオン化で生じたジェミネイトイオン対を励起するのに対し、可視光は主に励起一重項(三重項も含む)状態を励起することがわかった。赤外光は検討した約20種の多環芳香族分子すべてに対して光電流を増大させるが、可視光はいくつかの分子に対して減少効果をもたらした。 3.超高感度計測 いくつかの多環芳香族分子についてレ-ザ-強度などいろいろ条件を変え、高感度計測に最適な条件を調べた。次いで紫外光単独の場合と二波長を用いた場合とで検出感度を比較した結果、可視光で数倍、赤外光で一桁近くの感度の向上が達正された。 4.応用 本法の一つの応用として、極微量の試料溶液が扱えるセルを試作し、その有用性について検討した。更にパタ-ン電極を用いた簡易計測法や光ファイバ-の利用も検討しつつある。 5.総括 二年間の研究成果について総括し、今後の展望などについても考察した。
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