研究概要 |
本年度は,実態調査と資料収集に重点があるため,分析を踏まえた新知見の整理というわけにはいかないが,研究計画に沿ってその成果を略述すると以下の通りである。 1.林業事業体に関する全国的資料は,主要には林野庁と全国林業改良普及協会で得ることができた。今日,事業体として活況を呈しているものに共通することは,組織の能力に合ったムリのない事業規模と5〜10年先を見通した組織運営対応(リフト)及びリ-ダ-の存在の3点を指摘することができる。 2.北海道の実態調査からは,新たな事業体として機械利用を軸とした既存事業体の組合組織と,地域において職種横断的的な労務提供の企業組合組織が展開していた。いずれも北海道農山村の主要な生産関係が資本と賃労働という当該地域の構造的特徴を背景にしてのものである。しかし、生産におけるコスト低下の実績が得られており,今後の普遍的組織原理を内在しているだけに注目される。岩手県の実態調査からも,農民的共同を軸とした活発な事業体が見られたが,必ずしも発展の論理が明示的ではなく,地域資源管理を持続的に生産力を落すことなく展開している点が評価される。 3.宮崎県の実態調査からは,林業生産のための農民的共同組織が,地域の土地条件したがって産業としての林業の位置づけ如何では,地域の生活丸ごとの組織実体へと発展し,また,林業の側面では,森林組合系統を通じ巨大な木材市場にも参入,シェアを拡大していた。一方ではまた、これらの発展がいわば基本組織としての林業事業体の今日的な存立条件となっているのである。 次年度は,先進地域の実態調査を合せ,国産材を担う林業事業体の組織原理と存立条件を整理する。
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