(目的) 昨年度までに、2分間で1.1m^3の大気を吸引するエアサンプラ-を用いて採取した大気中浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter/SPM)を、長期間、ラットに経鼻的に吸入させると、SPMがμgのオ-ダ-でも、ラットの気道はヒスタミン(Hi)に反応するようになり、アナフィラキシ-性収縮後のHiに対する反応が亢進することを見いだした。今年度は、SPMのヒト気道上皮細胞に対する生物活性を調べた。 (対象および方法) 肺葉切除時に得られたヒト健常気管支片を0.1%プロテア-ゼ溶液中で4℃で18時間処理後、軽く振って上皮細胞を剥がしコラ-ゲンをコ-トした24穴のプレ-トに5×10^4/wellの密度で蒔き、ホルモン添加無血清培養液(Ham's F12 medium)中で培養。培養細胞が単層、均一になった時点で、2.5μg/mlから2.5mg/mlまでのSPM(SPMーI)を加え、48時間後の培養上清を採取した。上清中GMーCSF活性は市販のELISAキット(Genzyme社)を用いて測定した。また、ヒト気道上皮細胞の別のソ-スとして、adenovirusー12とSVー40のhybridvirusでtransformした細胞株である。BEAー2Bを用いて同様の実験を行った。 (結果) 1)ヒト正常気道上皮細胞は無血清培養条件下でGMーCSFを産生した。2)LPSはGMーCSF産生を増強させた。3)SPMはヒト正常気道上皮細胞からのGMーCSF産生を用量依存的に増強させた。4)SPMはヒト気道上皮細胞株BEASー2Bについても同様にGMーCSF産生を増強させた。 (結論) SPMは気管支喘息などアレルギ-性炎症疾患の病態において、アジュバントとしてIgE抗体産生を増強させるのみならず、直接気道上皮細胞に作用して、GMーCSF産生の増強因子として作用し、アレルギ-、炎症反応の遷延化に関与していることが示唆された。
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