研究概要 |
【目的】荷重部無気肺が生じる肺生理的原因をキセノンガス混合酸素吸入時のダイナミックCTを用いて解明することを目的とする。 【方法】対象は家兎10羽。全身麻酔下にhighーfrequency oscillatory ventilation(HFOV)にて人工換気を開始後非放射線Xeガス50%,酸素50%の混合気を用いて,Dynamic inhalation CT(DICT)を施行した。気腹後1時間おきに動脈血酸素分圧をモニタ-しながら無気肺が確認されるまで(無気肺が生じない場合は6時間後まで)DICTを施行した。次に腹側、背側の肺野濃度のCT値のtime density curveを作成した。不活性ガスの肺内への吸入が指数関数で近似できるとしたKetyの理論を基にtime density curveをC_t=C_o(1ーe^<+kt>)に回帰させ、係数Kの値を求めた。 【結果】10羽中5羽は無気肺が生じなかった(A群)が、5羽では無気肺が生じた(B群)。A群では動脈血酸素分圧に有意の変化を認めなかった。B群での実験開始時の動脈血酸充圧(PgO_2)と300mmHgを下回る直前の時点でのPaO_2では有意の変化を認めないが、直後の時点でのPaO_2とでは有意な低下を認めた(P>.05)。A群では腹側背側ともK値に有意の変化を認めなかった。B群ではPaO_2が300mmHgを下回る直前の時点のK値は実験開始時のK値に比し、腹側では有意の変化を認めなかったのに対し、背側では有意の上昇を認めた(P>.05)。またB群でPaO_2が300mmHgを下回る直前では腹側背側ともキセノンガスによるCT値の上昇が認められたが、300mmHgを下回ってからはほとんどCT値の上昇は認められなかった。 【結論】1)荷重部無気肺が生じはじめるまで肺胞容積の減少はあるが、気道の閉塞はない事がわかった。2)キセノンガス混合酸素吸入時のDynamic inhalation CTの手法を用いることにより、動脈血酸素分圧が低下あるいはCT画像による無気肺の確認以前に荷重部無気肺の早期診断が可能である。
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