1.クモ膜下出血(SAH)後の脳主幹動脈内腔への血小板の集積について ネコを用いたSAHモデル(脳血管破綻)では、SAH後2週間前後で増殖型血管症(PA)が発現する(既報)。抗血小板由来成長因子(PDGF)作用を持つ抗凝固剤(ヘパリン)の静脈内投与によりPAの発現が抑制され、PDGFがPAの発現に関与すると考えられる(既報)。同モデルに於ける破綻側中大脳動脈(MCA)内腔への新たな血小板凝集はSAH後21日間は認められた(既報)。2種のSAHモデル(MCA破綻及びMCA周囲血液注入)を用いた研究では、SAH後48時間以内では両者間での血小板凝集に有意差は認められなかった(既報)。SAH後48時間以降に於ける血小板凝集の両者間における差異については検討中であるが、血管破綻の方が血液注入モデルに比し血小板のMCA内腔への集積が強いとの印象を持っている。尚、よりSAHモデルとして手術手技が容易で侵襲も少ない血液注入モデルに於けるPAの発現についても検討中である。 2.各種薬剤の血小板凝集及びPA発現に及ぼす影響について Thromboxane A_2合成阻害剤(抗血小板剤)が血統破綻モデルにおいて、SAH後48時間以内では血小板凝集、血球成分の集積を抑制するが、内皮の屈曲、脱落は抑制しないことがわかった(既報)。48時間以降の形態学的変化、血小板凝集及びPA発現抑制に及ぼす影響については今のところ一定の結果が得られていない。今後実験例数を増やし検討していく予定である。さらに最近脳血管攣縮発生抑制に効果が認められつつあるtissue plasminogen activator、anthrombin IIIの効果についても併せて検討していきたい。
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