研究課題/領域番号 |
02670723
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小寺 重行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30119797)
|
研究分担者 |
中條 洋 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (70217735)
西田 篤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (60218162)
池本 庸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40159645)
|
キーワード | 血清LPHーX / 実験的精巣障害 / Dibutyle Phthalate / 実験的停留精巣 / カドミウム |
研究概要 |
精巣の造精機能障害は、臨床的には特発性男子不妊症が代表的な疾患であるが、その原因は現在のところ全く解明されておらず、治療方法も確立されていない。これに対し、われわれは実験的に精巣機能障害を作成し、病態および治療方法を検討してきた。これまでに精巣障害を確実に作成可能であった実験モデルは、1.カドミウム剤、2.停留精巣、3.可塑剤MBP,DBP、4.アルコ-ルである。その他のたとえば制癌剤などでは著明な精巣障害は作成できない。各々の精巣障害の特徴は、カドミウム剤では急性の障害であり、停留精巣は精巣を腹腔内に実験的に固定し、高温度下の条件で確実に強度の精巣障害をおこす。MBP(monobutyle phatarate)に代表される可塑剤では亜急性に精巣障害がおこる。アルコ-ルについては低蛋白栄養の状態下に長期アルコ-ルを投与するとSertoli細胞のjunctional complexが破壊され精巣機能障害をおこすことを確認してきた。これらの精巣障害モデルを利用し、精巣障害の診断方法の一つになりうると考えられるLDHーXの血清中の推移を酵素法で検討した。今回の実験的精巣障害の対象モデルは、1.カドミウム剤投与例、2.実験的精索捻転例、3.可塑剤DBP投与例、4.実験的停留精巣例とした。LDHーX活性の測定は酵素法でおこなった。測定検体は0.05M(pH7.4)リン酸緩衝液、0.15mM NADH、LDHーX内の特異体である0.15mM、αーケト吉草酸および測定血清を混合し、計3mlとし、25℃のcuvette chamber下で日立220ー10 spectrophotometerをもちいて、340nmでのNADHの吸収度の減衰を測定し、LDHーXの活性を測定した。 結果、 1.塩化カドミウム1回投与例では48時間後にLDHーXは5mU/mlと高値をしめし、その後、減少していった。 2.精索捻転例でも同様のパタ-ンをしめしたが、最高値は3mU/mlであった。 3.dibutyl phthalate投与例では投与7日までLDHーXは増加し、最高4mU/mlまで上昇していった。 4.実験的停留精巣例では精巣固定後7日までLDHーXは上昇傾向をしめした。 これらのLDHーXの増加推移と精巣の精細管内の精細胞の変性、脱落の組織学的変化とよく相関していた。 以上よりLDHーXは精巣障害の血清マ-カ-として利用できることが判明した。今後は臨床応用が可能が否かについて臨床例を対象に検討をおこなうこと、さらにLDHーXの局在について組織免疫法で基礎的検討を行い、LDHーX抗体による免疫学的組織障害が発生するか、などについて検討する予定であるが今回の研究成果までには至っていない。
|