研究概要 |
ヒト正常細胞および色素性乾皮症(XP)A,C,F群細胞で生ずる自然突然変異の種類をシャトルベクタ-pZ189を用いて調べた結果、どの細胞においても50%以上は欠失変異であった。残りは塩基対置換変異であり、その中でトランスバ-ジョンの割合が紫外線(UV)誘発変異と比べて、有意に高かった。 ヒトとはDNA修復能が異なるマウス細胞におけるUV誘発変異の種類をpYZ289を用いて調べ、ヒト細胞のと比較した。塩基対置換変異のうち91%はG:C→A:Tトランジションであり、これはヒトA群XP細胞におけるUV誘発変異の割合に近く、ヒト正常細胞のより有意に高かった。 ヒト正常細胞および小脳性運動失調症(AT)患者細胞におけるガンマ線誘発突然変異の頻度をpZ189を用いて調べたが、20グレイ照射までは両者に差は見られなかった。 DNA二本鎖切断の修復をヒト正常細胞とAT細胞で比較するため、制限酵素AvaIで1カ所切断されるシャトルベクタ-pZ189Avaを作成し、細胞内で起こるDNA鎖再結合の割合と正確さを調べた。両者において、切断されたpZ189Avaが再結合される割合に差がなかったが、再結合の正確さは正常細胞の方が有意に高かった。誤った再結合部の塩基配列変化を調べると、AT細胞においては切断末端部付近の数〜数十塩基を欠失するものが大部分であったが、正常細胞ではそれらは少なく、大きな挿入を有するものの割合が高かった。AT細胞のガンマ線高感受性の機構の1つとして、DNA二本鎖切断の再結合修復の正確度が低いことが原因である可能性を示す。
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