研究概要 |
ヒト遺伝病(色素性乾皮症(XP)、小脳性運動失調症(AT))を含む種々のDNA修復欠損細胞における突然変異をシャトルベクタ-を用いて調べた。 A,C,F群XPと正常細胞における紫外線(UV)誘発突然変異の頻度は、XPーAが最も高く、正常が最も低く、XPーC,Fはその中間であった。変異の種類はトランジションの割合が全ての細胞で高く(62ー84%)、特にXPで正常より有意に高かった。全ての細胞で、大部分のトランジションはG:C→A:Tの変化であり、残りのトランスバ-ジョンは大部分G:C→T:A、G:C→C:Gの変化であった。XP相補性群間では突然変異の種類に有意差はなかった。自然突然変異の種類は全ての細胞において50%以上が欠失変異であった。残りの塩基対置換変異のうち、トランスバ-ジョンの割合がUV誘発変異と比べて、有意に高かった。マウス細胞におけるUV誘発変異は、塩基対置換変異の91%がG:C→A:Tトランジションであり、ヒト正常より有意に高かった。AT細胞におけるガンマ線誘発突然変異頻度は正常と差がなかった。制限酵素で切断したDNA鎖切断の再結合の割合は、正常とATにおいて差がなかったが、再結合の正確さは正常の方が有意に高かった。ATは再結合部に数〜数十塩基を欠失するものが大部分であったが、正常細胞ではそれらは少なく、大きな挿入を有するものの割合が高かった。メチルニトロソウレア誘発突然変異の頻度は、マウスのアルキル化剤損傷DNA修復酵素(MT)欠損細胞でマウス正常より高く、G:C→A:Tトランジションの頻度が有意に高かった。 本研究によって、細胞のDNA修復能の突然変異誘発に対する役割を、DNA修復欠損遺伝病細胞を用いて分子レベルで明らかにできた。
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