研究概要 |
1、エノキタケより抽出精製されたレクチンはオリゴ糖の存在下で硫酸アンモニウム溶液より良好な結晶を生成する。今年度は本レクチンについて2オングストロ-ム分解能で座標精密化を行い、R値19%という高い精度の立体構造を得た。この結果、本レクチンは免疫グロブリンと類似した構造を主体とし、そのN末端側に短いαヘリックスは分子間βシ-ト構造を有することがわかった。またマンネンタケより抽出されたレクチンLZー8と一次構造上65%の類似性を有し、どちらも血液凝集作用の他に、免疫抑制作用を有している。さらに一次構造上は免疫グロブリンの可変領域と約27%の相同性を有することなどから、これらのレクチンは免疫グロブリンと分子進化何らかの関係があるのではないかということを示唆することができた。 2、ニワトリのβガラクトシド結合性レクチンの結晶化 ニワトリの皮ふから抽出精製された分子量14000のレクチンはβーガラクトシドに特異的な結合性を示すことから、脊椎動物由来のレクチンとして世界で初めてであるので結晶化を試みた。その結果、5mMリン酸バッファpH7、硫酸アンモニウム1.6Mの溶液からハンギングドロップ法で結晶が得られた。結晶は小さいめであったがプリセッション写真をとることができ、格子定数はa=106.3,b=67.3,c=44.8Aの空間群P2_12_12_1のもので2分子が非対称単位中に含まれることが予想された。皮ふからの抽出では量的に微量であるので大腸菌で発現させた分子量16000類似のレクチンの結晶化も試みたが、これについては結晶は現在のところ得られていない。 3、日本ニワトコレクチンの結晶化 Neu5Ac(2ー6)Gal/GalNacに強い特異性を有するレクチンで、A_2B_2タイプのサブユニット構造を有している。各種の条件下で結晶化を試みたが、これまでのところ結晶は得られていない。本レクチンはかなりの量の糖を結合した糖蛋白質であり、糖鎖部分の立体的ゆらぎが大きいため、結晶が生成しないと考えられる。今後このような糖蛋白質をいかにして結晶化するかが問題点となる。
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