研究概要 |
1、エノキタケレクチン(FVA)の精密構造解析を分解能2AでプログラムXPLORとPROLSQを用いて行った結果R値18.7%を得た。その構造を調べることにより、FVAは主として7本のベ-タシ-トからなる逆平行バレル構造からなることがわかった。さらに、ベ-タバレルのアミノ末端側には3タ-ンのアルファヘリックスと、それに続く結晶内で隣あう分子間のベ-タシ-トが付加されている。このベ-タバレルノ主鎖の折れたたみの様子は免疫グロブリンの1つのドメインと類似している。7本鎖のベ-タバレルは免疫グロブリンのCドメインと同一であり、4番目のベ-タ鎖が3番目のベ-タ鎖と水素結合するのはVドメインと同一である。このように、FVAは今まで構造の得られているレクチンとは異なる構造をもち、免疫グロブリンとの構造的な類似が見られる。これはFVAと免疫グロブリンの間のなんらかの分子進化的関連性を示すものであろう。 2、ニワトリのβガラクトシド結合性レクチンの結晶化 ニワトリの皮ふから抽出精製された分子量14000のレクチンはβガラクトシドに特異的な結合性を示すことから、脊椎動物由来のレクチンとして世界で初めてであるので結晶化を試みた。その結果、5mMリン酸バッファpH7、硫酸アンモニウム1.6Mの溶液からハンギングドロップ法で結晶が得られた。結晶は小さいめであったがプリセッション写真をとることができ、格子定数はa=106.3,b=67.3,c=44.8Aの空間群P2_12_12_1のもので2分子が非対称単位中に含まれることが予想された。皮ふからの抽出では量的に微量であるので大腸菌で発現させた分子量16000の類似のレクチンの結晶化も試みたが、これについては結晶は現在のところ得られていない。 3、日本ニワトコレクチンの結晶化 Neu5Ac(2ー6)Gal/GalNacに強い特異性を有するレクチンで、A_2B_2タイプのサブユニット構造を有している。各種の条件下で結晶化を試みたが、これまでのところ結晶は得られていない。本レクチンはかなりの量の糖を結合した糖蛋白質であり、糖鎖部分の立体的ゆらぎが大きいため、結晶が生成しないと考えられる。今後このような糖蛋白質をいかにして結晶化するかが問題点となる。
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