本研究は、中国少数民族が伝承する民族スポーツについてのデータベースづくりを目的としている。 しかし、中国全土に展開する55少数民族の全体について目的を遂行することは今回の研究計画によっては困難であるため、本研究はその第一段階として、対象を雲南省と広西壮族自治区に居住する少数民族に限定することとした。 研究は2年にわたって進められたが、平成2年度は、民族スポーツについてこれまでに公刊されている研究論文・調査報告を収集し、これらを一覧表にした文献目録を作成することに当てられ、平成3年度は、これら諸文献さらに研究代表者が中国においておこなったフィールドワークに基づいて、民族単位の民族スポーツ誌を作成すること、さらに両年度の成果を報告書の形にとりまとめることに当てられた。 その結果、1015件の文献と、8民族44種目から成る民族スポーツ誌とで構成された報告書が作成された。 中国におけるこうした民族スポーツに対する関心は、中華人民共和国成立後に展開された中心民族たる漢族による諸民族融和政策を背景としている。即ち、それは、全国4数民族伝統体育運動会の開催(第1回1953年)という形をとって実現をみるが、1982年の第2回大会後は4年毎の開催と定例化し、この全国大会への参加準備の意味をこめて、とりわけ1980年代から全国の省と市レベルの体育運動委員会が民族スポーツの調査・研究に着手した経緯をもっている。しかし、そうした調査・研究の多くは未刊行であることが判明し、今回のデータベースにもることができなかった。今後の課題とした残された点である。
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