研究概要 |
1,表現過程の手の行動分析について 本研究のねらいは、動作学の視点で美術教育の表現過程を評価する新手法を開発することである。基本仮説は、もし文章における「言葉」と「文脈」の関係のように、手の操作スタイル(形態、運動)を表現過程の単位として抽出できれば、この単位で表現過程の構造化ができるのではないかということであった。研究は、学習の観察と動作分類法に関する文献調査から検討していった。3ヶ年間で対象とした資料は、授業の動作分析の試みとして、(1)授業のメモモーション分析(分野:造形的な遊び等)、(2)児童の学習の時系列分析(分野:彫刻)であり、専門化した技術の動作分析の試みとしては、(3)専門家(電動轆轤で成形する技術)の技能のマイクロモーション分析であった。 2,開発したコンピュータコントロール型ビデオ観察支援システムについて 適切なマイクロモーション分析を実現するには、一人の表現活動を複数台のカメラで同時に撮影する必要がある。本研究では、カメラ4台分を1つに記録・観察するためのハードウエア環境を整備し、その環境を結びつけるビデオ観察支援システム(ビデオ・ワードプロセッサ、VWD)を開発した。このソフトウエアは、ビデオをリアルタイムに操作しながら3つの評価(記述評価・カテゴリー評価・記号評価)を統合的に実施するシステムである。 3,評価カテゴリーについて まず、児童の過程分析では、医学の日常の行動分類が有効であった。 児童の学習は、特殊な技法の集合でなく、生活に即しているからであろう。美術専門家の分析では、手の形式(形、動き)・知覚・形態の変化の3要素で見ていく方法があることをみいだし、動作学からの分析が可能であることを示した。
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