活性酸素種の研究は、その化学的重要性は勿論の事、生化学的、医学的にも重要である。酸素化学の最も基本的な化学種は分子状酸素と水酸アニオンであるが、この両者は水溶液中反応しないと報告されている。然しながら、、水酸アニオンの酸化還元電位は溶媒和によって大きく変化し、非プロトン性溶媒中ではかなり強い一電子還元剤として作用し得る。水酸アニオンに対して親和力の小さな溶媒を対イオンを選択するならば、水酸アニオンが分子状酸素に対いて一電子還元剤として作用し、eq1に示す反応が起ってス-パ-オキンドアニオンラジカルと、酸素原子アニオンを生成するものと期待して研究を行った。この目的のために、対イオンとしてセシウムイオン、溶媒としてヘキサンメチルフォスフォリックトリアミド(HMPA)を用いた。E.J.Hartらの研究により、アルアリ水溶液中酸素原子アニオンラジカルが生じると、水酸アニオンと酸素分子の間にeq2〜4に示す連鎖反応による酸素交換反応がおこる事がすでにわかっている。そこで、 ^<18>Oで標識したCs^<18>OMを無水HMPA中1気圧酸素を含む封管中、25℃および80℃で暗所反応させた。一定時間毎の封管中の分子状酸素を質量分析計でm/e32と34にピ-ク比を求めた。期待した通り酸素ガス中の ^<18>O含量は時間と共に増大した。この事実は、溶液中に ^<18>O^ーが生成した事を意味する。 ^<18>O^ーの生成は当初期待したeqへの反応であろうと考えているが、今後その確認を得る実験を検討する。いずれにしても温和な条件で酸素原子アニオンが生成した事は非常に興味深かい結果である。
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